10周年

灼熱日和の中、目の前にずっと鬼の頭が見えた。
神威岬をぼくたちは鬼岩城と呼んだ。
おっさんが車から降りてきて、スイカと缶コーヒーと
食べかけのアンパンをくれた。
(見ず知らずの旅人に、スイカを丸ごとバーンと
与えてしまうような大人になりたい)
その晩は二人でスイカを半分にしてほじくりしゃぶり尽くし、
海岸に大きな穴を掘って皮を捨てた。
海岸に大きな穴を掘ったときに、
ぼくは南京虫に脇の下を食われた。
(気が付いたのは次の日の朝。
脇の下に傷のかさぶたができていると思い、剥いたら、
かさぶたに手足がついて動いてるではないですか)
極めて不衛生。犬かよ。


鬼岩城、地図を見てみたら、
岬をパスするトンネルができているではないですか。
あのとき工事もしてなかったのに。
10年ってそういうことか。