さようなら

もう走る姿を見ることが出来ないことは、
もうずいぶん前から分かっていたのに、
最後の走りを見とどけた後の、
予想もしなかったこの気持ちは何なんだ。
一昨年と同じように綺麗に馬券を外した脱力感と、
同時に襲ってきたこの気持ちは。
彼が自分の中でとても大きな存在になっていたことを、
思い知らされた。

『今の気持ちは、ふぬけになったような、悲しいような、寂しいような。でも、あと1年間走りを見守るには、私のハートは小さすぎた』
金子真人オーナーのこの発言はすごい。
彼ほどの名馬を持っていながら、
レース毎に喜びというよりも深い恐怖を味わっていたんじゃないだろうか。
競馬は恐怖だ。
光に包まれた栄光の歴史と、血統と、桜肉と、暗黒の恐怖だ。