紙幣について

原宿からの帰り道。
ものすごい急いでいたし、
雨が降っていたし、
荷物を持っていたし、
革のあたらしい靴だったし、
もーうんざりっていう気分だったので、
五反田駅から会社までタクシーに乗りました。
乗ったあとに気付いたのだけど、
財布の中は福沢諭吉1枚でした。


あーすみませんおおきいのしかないみたいなんですけど」
「あーきょうはおおきいのばっかりもらうからではらっちゃったよ」


みたいな運転手とのやりとりがありました。
その直後にまったく予想してない発言が運転手からくりだされました。


「ふるくなっちゃってもいいですか」


聞き違えと思ったけど、
運転手が言ったのは間違えなく
「ふるくなっちゃってもいいですか」
でした。
あたりめーだろぼけが野口英世じゃなくて夏目漱石
都合のわるい奴がどこにおるんじゃわれ
と、ぼくは直感的に思いました。


「ぜんぜんかまいませんよ もんだいないです(笑)」
「ほどうきょうがあるのでそのまえでとめてください」


ぼくは歩道橋までの数秒間、
「ふるくなっちゃってもいいですか」
について考えて、そのことに頭を集中させました。
でも結局意味がさっぱり分かりませんでした。


車は歩道橋の前に停まって、
ぼくは福沢諭吉を1枚、トレイの上にのせました。
かなり申し訳なさそうな顔をしていたと思います。
運転手は尻のポケットから
(おそらく私物の)くちゃくちゃの財布を面倒臭そうに取り出して、
中から紙幣を取り出しました。
そのときです。
財布の中からはぼくの全く予想していないものが出てきました。
樋口一葉1枚と、
野口英世2枚と、
初代内閣総理大臣伊藤博文2枚が出てきました。


「うわ これつかえるんですかねえ・・」
ぼくは思わず奇声をあげてしまいました。
運転手はクールに言いました。
「じはんはむりだよ」


ところで伊藤博文って、
日本が朝鮮を支配していたときに統治に行った人なんだそうだ。
会社の物知りのお兄さんに教えてもらいました。
結局朝鮮人に暗殺されてしまったそうだ。
「暗殺した人の名前はおれの名前とちょっと似てるんだよ」
と、物知りのお兄さんは得意げになっていました。
結局その暗殺した人は、韓国の英雄になって、切手まで出来ちゃったらしい。
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/itouhirofumi.htm
となると伊藤博文が紙幣に描かれていた時代って、
けっこうアレだな。と思った。